平成28年5月7日

音声ペン

この4月から、妻が東京で就職することになりました。そのため、こにたんは単身赴任先の会社のアパートに住所を移し、娘は妻のもとから東京の予備校に通い、息子は高校の寮に残るというように、一家は離散状態になってしまいました。あれから1ヶ月あまり、妻の職場は土日もろくろく休めないほどに忙しいようで、会うこともままなりません。それよりも何よりも、体の弱い妻のこと、病気にならないかと心配です。若い頃からの念願だったという就職ですが、体を壊しては元も子もありません。無理をしないようにと願うばかりです。そんなわけで、借りる眼のなくなったこにたんは、一人で生活するために、いろいろと準備をしてきました。そのうちの一つが、今回ご紹介する「音声ペン」です。
「音声ペン」というのは、ペンの形をしたICレコーダで、触っただけでは何かわからないような物品に特殊なシールを貼り付けておき、その物品が何ものかをペンに録音しておくことで、ペンをシールにタッチするだけでその物品が何であるかを知ることができるという製品です。昔、視覚障害者向けに開発された「ものしりトーク」という製品がありましたが、あれと同じコンセプトの製品です。あれって、今でも売ってるのかな。ものしりトークはICタグを物品に添付するタイプでしたが、こにたんが買ったものは、紫外線に反応する特殊なインクで印刷された透明なシールを物品に貼り付けるタイプです。シールの大きさは縦横1cmほどで、少し厚みがあり、触ればシールの存在がわかるようになっています。ペンのサイズは、長さが約15cm、断面が2cm×2cmほどで、先が細くなっており、その先端部にセンサーが組み込まれています。
使い方は簡単で、まずシールを物品に貼り付けます。そしてペンの録音ボタンを押し、物品の品名などをマイクに向かってしゃべります。その後ペンでシールをタッチすると、録音が停止するとともに、シールの番号と録音内容の紐付けが行われます。これで次回からはシールをタッチするだけで音声が再生され、対象の物品が何であるかがわかるという仕組みです。
じつを言うと、2、3年ほど前、こにたんは視覚障害者向けと銘打たれた、今回のものとよく似た製品を購入したことがあります。お値段は2万円台の後半でしたか。ものしりトークがたしか6万円台でしたから、これは安いと思って衝動買いしてしまいました。この製品は、仕組みとしては今回購入したものと同じですが、サイズは今回の製品の倍ぐらいありました。使い勝手は今回の製品とそれほど変わりはなかったものの、ある日突然メモリーカードのラッチが効かなくなり、メモリーカードがスロットから飛び出るようになってしまいました。数ヶ月しか使っていなかったので、涙です。設計が悪かったのか、部品が安物だったのか、工作や組み立ての精度が悪かったのか、何が原因だかはわかりませんが、こうしたトラブルの場合、保証で修理してもらっても長持ちはしないものです。ですから、高い勉強台とあきらめて、廃棄してしまいました。視覚障害者に使いやすい製品が出てくることは歓迎ですが、市場の狭い「視覚障害者専用」製品よりも、一般市場に出ていて視覚障害者にも使える、すなわちユニバーサルデザインな製品のほうが望ましいことは、先の経験を引き合いに出すまでもなく明らかです。ですから、今回はそうした眼でいろいろと検索してみると、あるではないですか、一般市場で売られていて、視覚障害者にも使えそうなものが。
ということで、今回選んだのは、「G-Talk」という製品です。amazonでは「奇跡の幼児英語教育用 ”音声ペン・G-Talk” 絵本とCD・DVDを組み合わせてヤングママの間で話題沸騰です!専用ドットシール4、096枚サービスキャンペーン中」というタイトルで、10800円で売られていました。この製品は、タイトル通り教育向けに開発されたものですが、視覚障害者の物品識別にも全く問題なく使えます。シールが4096枚も付いているので、不足はありません。しかも、子供が使っても壊れないよう、頑丈に作られていると想像されます。また、パソコンにつないでデータのバックアップや編集もできる。それにお値段も安い。いやあ、いい買い物ができました。
さて、この製品をこにたんがどのように使っているかです。まず、触ってもわかりにくいものとしては、キャッシュカードや保険証などのカード類、貯金通帳、残しておかなければならない重要な書類、家電製品などのマニュアルや付属品、CDやDVDなどがあります。若い頃には、このような似たような物品であっても、ちょっとした形の違いや触り心地の違い、しわの位置の違いなどから、それが何なのかを識別できていましたが、年を取るとそうはいきません。年は取りたくない者ですが、そこはあっさりとあきらめて、テクノロジーに頼ることにしましょう。
これらの物品のうち、CDやDVDはケースから取り出し、専用のバインダーに中身だけを入れ、パラパラとめくれるようにし、バインダーのポケットとCD、DVD本体にシールを貼り付けています。残りのものは、B5サイズの封筒に入れ、封筒の外側にシールを貼り付けて、中身が何であるかわかるようにしています。このように、細々としたものを、バインダや同じサイズの封筒に収めてサイズをそろえることで、保管や管理が容易になるとともに、楽にシールが読み取れるようになります。
このようにして、小さなものの管理が、ほぼ全盲のこにたんでもできるようになりました。今後ですが、やたらボタンの増えた家電製品のそれぞれのボタンにシールを貼り付け、スタートボタンを押すだけの人から脱却したいと考えています。また、シールを貼るためのプラスチックのタグも販売されているようなので、冷凍食品やスーツ、ネクタイなどにも応用範囲を広げたいと思います。それから製品に望むことは、反応速度や感度をもう少し高め、物品の識別が迅速・機敏にできるようにしてもらいたいと思います。しかし何はともあれ、テクノロジーの進歩をありがたく思うこにたんでした。

 

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