平成27年9月13日

白杖を新調

今度のシルバーウィークに、こにたんの長女が結婚式を挙げることになりました。おとうさんとしては、恥ずかしくない格好をしなければなりません。そのため、これを機会にボロボロだった白杖を、新しいものに変えることにしました。我々視覚障がい者にとってなくてはならない白杖。一家言をお持ちの方は多いかと思います。そのような先輩諸氏を前にして、歩行訓練も受けたことのないこにたんが、ここで何かを述べるというのは大変恐縮ではありますが、今回の白杖購入で考えたこと、実際に購入した白杖についての感想などを記しておきたいと思います。
最近のこにたんの買い物のスタイルは、ネットの発達もあり、じっくりと情報を調べて、少し高くても気に入った物を買い、それを寿命が来るまで長い間使い続けるというものです。しかし、若い頃はそうではなく、行き当たりばったりの買い物をしていました。ですから、こにたんが最初に買った白杖も、その選び方はいい加減なものでした。こにたんが白杖を初めて手にしたのは、今から20年近く前のことになります。その頃、自転車をフェンスにぶつけて左手の骨にひびが入ったり、犬を散歩させていて穴に落ちて肋骨にひびが入ったりといろいろあって、病院勤めをしていた妻に、出入りの業者に白杖を扱っているところはないかと相談しました。しばらくして我が家に届いた白杖は、軽量金属製の折り畳み式で、石突も柔らかい金属で、持ち手のラバーすらないものでした。長さも適切な長さよりもはるかに短いものでしたが、当時は白杖に対する知識もなく、白杖とはこんなものかと思っていました。なお、このとき妻はもう1本の杖を買ってきていました。それは、ピストル型の持ち手で先端がラバーになっていて色はこげ茶色でした。おそらくそれは、一般のお年寄りが使うものだったのでしょう。妻のちょっとした愛情だったと思いますが、やはりその杖は視覚障がい者が持つには不向きでした。
さて、こうしてコニタンの白杖生活が始まりました。しかし、使い方はわかりません。白杖の目的は、路面の状況や障害物の有無を把握することぐらいは想像できますので、適当に路面をたたいたりまさぐったり、白杖を左右に振ったりしていろいろと試行錯誤をしてみましたが、やはり長さが短かったせいか、あっと思ったら溝に落ちていました。また、石突がすべらないため、突っかかりも多く、スムーズな歩行には程遠いものでした。そんなとき、こにたんは、
「世の視覚障がい者は、こんなものでよく歩けるものだなあ。」
と思ったものです。おそらくはこのようなタイプの白杖にも正しい使い方というものがあって、ちゃんと訓練を受ければ何とかなるものなのでしょうが、その頃のこにたんは仕事が忙しく、訓練を受けるだけの時間が取れませんでした。
この最初の白杖は2、3年は使ったでしょうか。そのうちにネットを検索していると、先端がローラー式になっている白杖を見つけました。最初の白杖への不満もありこれを見つけた時にはほぼ衝動買いでした。この白杖は、ローラー式ということで、路面の状況を点ではなく線で把握できることから、歩行の安心感が格段に向上しました。この白杖は、先端のローラーがすり減るたびに先端部分を取り換え、15年ほど使い続けました。しかしこの杖は、ローラーが大変重く、左右に振る動作には骨が折れました。また先端が重いため、自動ドアのガラスなどにぶつけると、かなり大きな音がしていました。
そんなこんなで、今回の白杖購入に際しては、十分に時間をかけて情報を調べ、これまでの白杖の欠点をクリアするものを選びたいと思いました。過去の経験を踏まえ、いろいろ調べたうえで、こにたんが考えた新しい白杖の条件は以下のものです。
①軽いこと。
②突っかかりが少ないこと。
③路面を滑らせ、線で路面の情報が把握できること。
④折りたためること。
⑤シャフトにぐらつきがないこと。
⑥鉛筆握り、握手握りのいずれでも、疲れにくいグリップ形状であること。
⑦少々体重をかけてもたわまない程度に頑丈なこと。
⑧何かの事故に遭遇しても、折れてしまわないこと。
⑨耐久性があり、長持ちすること。
いろいろと欲張った条件を並べましたが、これらの項目の中には相反するものもあります。そんな都合のいい白杖が見つかるでしょうか。
さて、楽しいネット検索の始まりです。日本点字図書館や日本ライトハウス、amazonなどで候補となる白杖をリストアップし、メーカーサイトでそれぞれの特徴などを調べました。そして、数ある製品の中から、上記条件にマッチしそうな白杖としてこにたんが選んだのは、株式会社KOSUGE社製のMyCaneと、有限会社テイクス社製のパームチップの組み合わせでした。MyCaneにはいくつかのタイプがありますが、こにたんは5段折でグリップがカーボン製のものを選び、それを日本点字図書館で注文しました。ちなみに、この日本点字図書館のサイトは、非常にわかりやすく、注文も簡単でした。さすが視覚障がい者を相手にしているサイトです。
白杖の現物は、数日後にジャパンポストの便で届きました。包みを受け取って、あまりの軽さにびっくり。①の条件は合格です。でもその一方で、この軽さで耐久性は大丈夫かなあ、グラグラしないのかなあなどと不安もよぎりました。早速封を切って、折りたたまれていた白杖を伸ばしてみました。左右に振ってみると、これが意外にしっかりしています。直杖とまではいきませんが、それに近い感触です。つなぎ部分の内筒の長さが6、7cmはありましょうか、非常に長く、加工の精度もいいようで、それらがぐらつきの少なさに寄与しているようです。とりあえず、⑤もほぼ合格です。また、外筒の継ぎ手部分にはリング状の補強が成されており、これで外筒の縦割れを防ぎ強度を確保しているようです。見た目は竹のようでスマートさはありませんが、頑丈そうな感じはします。耐久性は後にならないとわかりませんが、垂直に体重をかける限り、少々のことではたわんだり折れたりすることはない感じです。グリップの形状も上部にいくほど太く、断面も台形になっており、カーボンの硬質ですべすべした感触とともに、軽快で握りやすいものとなっています。⑥も合格です。なお、メーカーのホームページによれば、ここの会社の社長さん、元は東レにいた人で、2009年に東レ・デュポン(株)の常務理事を退任し、今の会社を設立されたそうです。そしてそれまでに培ったアラミド繊維や強化プラスチックの技術を用い、軽量で折れにくい白杖を開発したとか。ここは、若い会社なんですね。その技術力を生かした将来の活躍に期待したいです。
次に突っかかりの点ですが、数日間使ってみたところ、かなり良好です。これについては先端に取り付けられたパームチップのおかげです。このパームチップは、直径4cm、高さ2cmで、両手鍋の持ち手を取り去ったような形状をしており、鍋の蓋と取っ手に当たる部分が硬質のゴム製でシャフトとつながっています。このような形状から、路面にタッチすると、首が微妙に傾き、それが元に戻ろうとする力とシャフトの反発とが相まって、杖の先端がジャンプするような感じになります。また、底面がフラットで滑りやすい材質であることと、先の首が傾く性質から、進行方向のでこぼこを乗り越えられるようになっています。恐らく1cm程度の高さの障害物ならば、容易に乗り越えられるでしょう。これらのことから、突っかかりが少なく、スムーズな歩行につながっているものと思います。ただし、路面の情報を線状に把握するには、杖をかなりソフトに滑らせる必要があり、ローラー式とは異なり少し慣れが必要です。それとローラーのように転がるわけではないので、常に滑らせるような杖の使い方をしていると、パームチップの寿命が早く尽きてしまいそうです。ですから、路面の情報を線状に把握するのは、必要に応じて行うことに留めておくのがよいかもしれませんね。ま、ローラー式とは性質が異なりますが、ともかく②、③も合格です。
ということで、今回の買い物では、ほぼ満足できる城杖が購入できました。他社製のものを直接手に取って比較したわけではないので、こにたんの買い物がベストかどうかはわかりませんが、皆さんの参考になればと思い、レポートさせていただきました。今度の白杖は、慎重に選んだものですから、できるだけ永く使い続けたいと思います。なお、これまで長年使ってきたローラー式白杖は、2度いっしょに富士山に登った思い出深いものなので、捨てるには忍びない気もします。しかし、何にでも別れはあるものです。長年こにたんの安全確保に寄与してくれたことに感謝しつつ、燃えないゴミに出させていただきましょう。

 

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