平成27年8月16日

女神の時代

最近の旬の話題といえば、何と言っても「安保法案」ですよね。こにたんはこれまで、このコラムで政治的話題を取り上げることを避けてきましたが、こにたんも人の親です。子や孫の世代が苦しまないためにも、この問題だけはちょっと一言書いておきたいと思います。法案が憲法違反だとか、自民党の議員がマスコミを黙らせろと言ったとか、法的安定性なんて関係ないと言ったとかいろいろなことが報じられていますが、ここでは戦争のことを原点に立ち返って考えてみたいと思います。
そもそも戦争ってなぜ起きるのでしょうか。歴史の好きなこにたんは、歴史小説を読みながら、この問題をずっと考えてきました。しかし、歴史小説や歴史の教科書を読んでみても、この問いに対する答えはなかなか見つかりません。もちろん、領土的野心のために他国を攻めたり、宗教を背景にする戦争はわかりやすいのですが、20世紀に入ってからの戦争は、どうも納得がいきません。オーストリアの皇太子が鉄砲で撃たれたことが、なぜ世界を巻き込む大戦に発展したのか。ベトナムのトンキン湾で、北ベトナムが米国の艦船を攻撃したのが、なぜ泥沼のベトナム戦争へと発展したのか。イランとイラクはなぜ戦争をしなければならなかったのか。ソ連はなぜアフガニスタンに侵攻したのか。そのほか記憶に残る戦争はいろいろありますが、どれもこれも戦争するほどの理由があるようには思えません。
2001年、9.11が発生しました。これを受けて、アメリカをはじめとする多国籍軍が、アフガンやイラクで戦争を始めました。この戦争がそれまでと異なっていたのは、ネット上で多くの情報が伝わってきたことです。そしてこにたんはこれらの戦争の成り行きを眺めているうちに、戦争がなぜ起きるのかの答えがわかりました。その答えとは、戦争は起きるのではなく、意図的に引き起こされるものであること。そして、誰がそれを行っているのかといえば、それは戦争によって利益を得る人間だということです。要するに、戦争とは金もうけの手段だったのです。そういう理解で過去の戦争を見直してみると、心の中のもやもやが晴れてきました。そして、戦争は決してするものではないと考えるようになりました。
こにたんが理解した最近の戦争の起こし方は、次の通りです。まず、人々を民族、宗教、主義・主張、肌の色、国境などで分断します。次にそれぞれに対し、相互に紛争の種となるものをばらまきます。紛争の種とは、暴力、差別、宗教的対立、マイノリティーへの依怙贔屓、過度な正義感や優越感、国境線を曖昧にすることなど、いろいろです。紛争の種が芽を出せば、それをネタにマスコミを使って互いの憎悪をあおります。また、為政者や学者などに金をまき、自分たちの正当性を主張させ、世論を沸騰させます。次に互いの陣営に金を貸し、兵器をばらまき、あるいは兵士を訓練して戦争の準備をさせます。そして何かの象徴的な事件を起こし、それをきっかけに戦争に突入させます。最後に資金の回収方法です。戦争が終われば両社ともに国土は荒廃しますが、それでも勝者からは賠償金などを基にして回収することができます。資源がある国なら、その資源で回収することもできます。破壊されたインフラなどの復興を請け負うことで回収することもできます。安値で土地や株式を買い、復興後に高くなった際に売るという形で回収することもできます。
こうした「悪魔のたくらみ」を誰が計画し、実行しているのかですが、それはおそらくは莫大な金を動かすことのできる、少数の家族だと思います。陰に隠れたそうした人々が、安全地帯にいながら、国を動かし、あるいは世界中にいる手下に指示を出しているのでしょう。以上はこにたんがこれまで調べてきた結論ですが、これらを証明することは困難です。ですから、これらはこにたんの妄想ととらえられても仕方ありません。しかし、戦争を上記のようにとらえると、いろいろなことがすっきりと理解できます。このため、こにたんはこのような見方も悪くないと考えています。それに多くの人が戦争をこのようにとらえることで、戦争に巻き込まれる危険を減らすことができます。誰も、どこか安全地帯にいる金持ちのために、自分の命をかけることなどしたくありませんよね。まして、これが事実なら、「お国のために死んで来い」などと、子供を戦争に駆り立てる親はいなくなるはずです。
さて、今回のコラムのテーマは「女神」についてです。ちょっと前に、水上洋子作の『女神の時代 女性原理が21世紀の文明を作る』という本を読みました。この本の主張は、次のようなものです。人類がチンパンジーと枝分かれしてから、旧石器時代に至る数百万年の間、人類は自然から食料を得、平和な暮らしをしていた。新石器時代に入り、農耕が始まると、富の蓄積が起き、都市ができるようになった。まだ戦争はなく、人々は平和で豊饒な文明を築いた。この時代までの人類は、他のほ乳類同様、母系制社会だった。これは、この時代の偶像がすべて女性像であることからもうかがえる。人々は、作物を芽生えさせ育み実らせる大地と、子どもを生み育てる女性とを同一視し、神秘の対象とした。そして何事にも細やかな心配りのできる女性の声に従った。
やがて北方の遊牧民が攻めてくるようになる。そして人類は戦争をたびたび経験する。そうなると、筋力のある男性が優位になり、父系制社会へと移行を始める。その時期は、西アジアからヨーロッパにかけては紀元前5000年あたりから西暦0年頃にかけてであるが、島国である日本では鎌倉時代まで母系制社会が残った。日本の歴史が比較的平和だったのはそのためである。その後、人類の歴史は戦争の歴史となる。そして時代を経るに従い戦争の規模は大きくなり、やがて世界中を戦争へと巻き込むことになる。
同書ではこうした大局観に立ち、人類が父系制社会に移行する前の社会を「女神文明社会」とし、トルコのアナトリア文明、古代エジプト文明、クレタのミノア文明、イタリアのエトルリアなどの事例を紹介しているのです。そして、この21世紀を戦争のない時代にするには、また環境問題、危険な食品の問題、原子力発電の問題などを解決し、安心で豊な時代にするには、あらゆる「命」を尊重する、女性原理の平和な文明へと帰らなければならないとしています。
こにたんもこの本を読んで、また前述の通り戦争のことをいろいろと考えてきて、戦争を回避するためには、家庭を切り盛りする女性の知恵が必要だなと考えるようになりました。女性は何かとおしゃべりが好きですが、男性にとってうっとおしげな女性のおしゃべりも、場を和ませる効果があります。意図的かどうかはわかりませんが、女性はそのおしゃべりの効用を活用し、ばらばらになりがちな家族を繋ぎ止め、地域をまとめています。男性だけの職場に女性が何人か入ってくると、衝突や摩擦の多かった職場の雰囲気が穏やかになり、仕事がスムーズに運んだという経験をお持ちの方も多いでしょう。男性だけでは暴走しがちだけど、女性がいるとうまくブレーキをかけてくれます。男性は観念論に陥りがちですが、女性はそれを現実に引き戻してくれます。こうした女性の特性は、究極の選択である戦争を回避するのにも役に立ちます。蛇足ながら、以前ある選挙で、○○に投票する男性とはSEXしない女性の会なる団体ができたことがあります。なぜその○○氏が一部の女性に嫌われたかはわかりませんが、男性であるこにたんには、この手法はこたえるなあと思いました。まあ手段はいろいろとあると思いますが、女性には見かけ以上に力があることを忘れないでください。
世界には獰猛で野蛮な人々が少なからずおり、現実に戦争や紛争が起きている以上、いざとなれば戦うという気概は必要でしょう。しかし、一部の特権階級を除いて戦争から得られるものは少なく、失うものは膨大です。ですから、戦争は可能な限り避けなければなりません。戦争を避けるためには、他国の挑発には決して乗らない、攻めてくるまでは決して動かない、という固い決意が必要です。ところが、今回の安保法案は、攻めてきてもない相手と戦争をすると言います。そしてそれが平和のためだと言います。本当にそうでしょうか。どこかの国を力づくでねじ伏せるよりも、紛争の種を一つずつ平和的な方法で丁寧につぶしていくほうが賢いやり方ではないでしょうか。女性がおしゃべりによって家庭や地域の問題を解決しているように、紛争当事者を同じテーブルにつかせ、お互いの主張を十分に吐き出させ、それが本当に殺し合うほどの内容かどうかを冷静に考えさせることが必要ではないでしょうか。
朝鮮戦争の頃、米国のダレス国務長官が、吉田首相に憲法改正を要求してきました。これに吉田首相は、「女性たちが必ず反対するから、改憲は不可能だ。女性に投票権を与えたのはあなた方ですよ」、と」言い返したそうです。これは大変賢明なやり方だったと思います。吉田首相はこうして現憲法を守り、朝鮮戦争への関与を回避したのです。そして、その後の歴代政権も、平和憲法があるおかげで、戦争に巻き込まれることから逃れてこられたのです。
しかし、その平和憲法が、危機を迎えています。それは解釈改憲という姑息な手段を唱える人たちによってです。この危険な人たちに、誰が政権を与えたのでしょうか。無理が通れば道理引っ込むと言います。本当に今の法案が通ってしまうと大変です。昔のファシズムも復活しかねません。これに加担しているのは、男たちでしょう。女性は誰も子供たちを戦争に行かせたくないはずです。この法案を止めることができるのは、女性です。今こそ、世の女性たちに、声を上げてもらいたいと思います。そして、この先は「女神の時代」とまではいかないまでも、男性と女性が共に手を携え、女性の知恵を活用して平和な時代を作っていくことを願っています。

 

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