日本赤十字社
松山赤十字病院
院長 横田英介殿

四 国 弱 問 研
(弱視者問題研究会/四国地域)
幹事 佐藤麻衣

 

「見やすさへの配慮」に関する要望書

 

拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。また日頃は、医療を通じ地域社会に貢献して頂きまして誠にありがとうございます。
さて、私たち四国弱問研は、全国組織である弱視者問題研究会の地域組織として、弱視者(視力、視野に障害を有する者)にとっても暮らしやすい社会の実現を目指して活動しております。
つきましては、松山赤十字病院の建て替えにあたり、誘導ブロックや院内表示などに配慮して頂き、私たちにも利用しやすい施設にして頂きたく、別紙のとおり要望致します。
「見やすさへの配慮」は、視覚障害を有する弱視者だけでなく、超高齢化社会における多くの高齢利用者にとっても有意義であろうことは容易に想像できます。また、国レベルでも「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(平成18年6月21日法律第91号)が制定され、さらに「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」(平成24年改訂)も公表されておりますことから、既に、このような配慮は十分検討されているかと存じますが、弱視者の立場から特にお願いしたい点を別紙のとおり列挙致しました。(高齢者に関する項目は、高齢視関連の情報を元に記述しております。)
ぜひとも参考にして頂き、新しい松山赤十字病院のバリアフリー化に取り入れて頂きますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

電子メール e.jakumonken@gmail.com
四国弱問研ホームページ http://ehimejakumonken.web.fc2.com/

 

弱視者・高齢者に有効であろう「見やすさへの配慮」
要望事項とその理由等

 

●視覚障害者誘導用ブロック等
・基本的に黄色。地との輝度比2.0以上のもの。地の色が白色や黄色に近い場合はブロック両側に10センチ程度の縁取りを付け輝度比を確保したもの。
・道路から総合案内まで敷設。
・階段や段差などの危険箇所や、トイレ、エレベーター操作盤前に敷設。
※弱視・・・誘導用ブロックを視覚的に活用しており、誘導用ブロックは黄色という認識が強い。総合案内までたどり着くことができれば必要に応じサポートを依頼できる。(ただし、床面の凹凸は、車いすやストレッチャーなどのスムーズな走行に支障が出る場合がある。そのため、屋内においてはゴム製の誘導マットの方が望ましい。誘導マットの色は、黄色や濃い緑色など床面との輝度比が確保できるもの。)

●階段
・始まりと終わりに視認しやすい誘導用ブロック(または誘導用マット)を敷設。鋲タイプは配色を考慮しても点状で面積が小さく視認性が低い。劣化により鋲が外れるなどのデメリットに加え、杖利用者にも危険であるため避ける。
・段鼻にコントラストのある滑り止めの取り付け。
・手すりは見つけやすく配色。
・十分な明るさを確保。
※弱視・高齢者・・・特に階段を見下ろした際、段差が見えづらい。暗いと踏み外しによる転倒の危険性が高い。

●サインの位置
・頭上だけではなく、近づいて確認できる高さに表示。
※弱視・・・近づければ判読可能なケースが多い。視野狭窄にも有効なケースが多い。
※高齢者・・・老化による視野の狭まりから、高所のサインは見落としがち。また、高齢者の多くが前傾姿勢であるため、低い位置のサインが見つけやすい。

●サインのフォントや配色
・大きく、地の色とのコントラストを確保し、色覚障害者にも見えやすく表示。
※弱視・・・ゴシック体、黒色地に白色文字などが特に見えやすいケースが多い。濃い色、淡い色は区別がつかないケースが多い。
※高齢者・・・老化により視界が黄色がかってくるため、黄色との配色には要注意。

 

●トイレ
・上記「サイン」の項目内容をふまえ、入り口に見つけやすく男女の区別が容易なデザインで表示。また、個室内の便器洗浄ボタンや呼出しボタン等の配置・形状・色などはJIS規格を適合。(望ましい例:便器洗浄ボタン=丸形ボタンに触って判る水滴マークを付ける。) 呼出しボタンについては、誤って押すことのないよう十分な配慮が必要。

●壁や柱の配色
・通路や広い空間で柱が背景に溶け込むような配色は避ける。
・動線上に柱があるケースでは、床面などとの配色に配慮するか、掲示物を貼るなどして存在を視認し易く配慮。
※弱視者・高齢者・・・動線上のものが視認し難いと衝突の危険性が高い。

●受付、各診療科、会計・薬局など
・番号表示モニターは、頭上だけでなく近づける高さにも設置。
・再来受付機、自動精算機などのタッチパネル機器は、文字やボタンの大きさや配色に配慮。 
・モニター表示文字はゴシック体、紺色地に黄色または白色文字など、色覚障害者にも見やすく配色。
・番号の読み上げは聞き取りやすく配慮。番号で返事がない場合には、名前で呼び出しするなどの配慮。

 

※最後になりましたが、従来どおりサポート担当者を配置して頂きますよう要望致します。

 

 

★備考

◎弱視について
・弱視者は視覚障害者認定の2級から6級の人数で19万人(視覚障害認定者全体の約6割)。しかし、同認定を受けていない者は多く、日本眼科医会の発表によれば144万9000人いると言われている。
・症状は、視力障害(矯正視力0.3以下)、視野障害(狭窄・欠損)、色覚異状、夜盲、羞明など、状態や組み合わせが個々に異なり、〝見えにくさ〟や〝不自由さ〟はさまざまである。
・(原因:網膜色素変性症、(加齢)黄斑変性症、白内障、緑内障、糖尿病網膜症、事故や病気による角膜や視神経の損傷、脳卒中など。)

◎高齢視について(カラー環境デザイン研究所のWebページより)
・誰でもいつかは"高齢視"に!
人の眼は40代から、加齢とともに徐々に変化し、" 高齢視"という状態になっていきます。
近くのものに焦点が合わない(いわゆる老眼)、視力が低下する、明るさ暗さに素早く対応できない、視野が狭くなる、まぶしさに弱い等の現象が顕著になります。
眼の中の水晶体や筋肉、視細胞等が老化することにより起こるもので、その中でも特に水晶体が濁る老人性白内障はよく知られています。
これらは自覚しやすく、老眼は眼鏡で補うことができます。
しかし、なかなか自覚しにくく、また意外に知られていないのが色覚が変化する(色の見え方が変わる。)ということです。
これは、皮膚が長年紫外線を浴びるとメラニン色素が蓄積し(日焼けの状態)、シミができるように、眼も日に焼けた、ちょうどしみ色のサングラスを掛けたような状態(黄変化)になるからです。
全体的に色の明度(明るさの度合い)、彩度(鮮やかさの度合い)とも低下して見えるため、明るい色・暗い色、くすんだ色・地味な色が見にくくなります。
老人性白内障で物がボーッと霞んで見える、二重三重に見える等はよく聞きますが、"高齢視"になった人には見えにくい色、判別できない配色があり、衣・食・住のあらゆるシーンにおいて不具合が生じてきます。

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