平成28年1月25日

テレビリサイクルと明るくなった郵便局

アナログ電波が停止されて以来、物置台になっていた、単身赴任先のブラウン管式テレビを、先日やっと処分しました。こにたんはテレビをあまり見ないので、アナログ電波の停止を機に、NHKとの契約は解除していたのですが、その後も定期的にやってくるNHKの訪問員を撃退するために、テレビを見ていないことの証拠物件としてアナログテレビを残しておいたのです。しかし、アナログ電波停止から何年経ったでしょうか、最近ではNHKもあまり来なくなり、アナログテレビは名実ともに寿命を終えました。そこで、やっとテレビを処分することになったのです。
テレビの処分の方法としては、近くの電気屋さんに引き取ってもらう方法もあるようですが、それだと処分費用が少し高くなるようなので、こにたんは自分で処分することにしました。テレビを自分で処分するには、郵便局で「家電リサイクル券」というものを購入し、現物とともに近くの指定取引場所に搬入しなければならないようです。ということで、先日の金曜日、午後から休暇を取り、おやじとおふくろに手伝ってもらい、無事処分を終えることができました。
ところで、リサイクル券を郵便局で買わないと行けないと知ったとき、こにたんはちょっと憂鬱な気分になりました。郵便局にはもう10年以上も行っていませんが、こにたんが知っている郵便局は、いつも混んでいて、待ち時間が長く、職員は愛想がなく、黙々と仕事をしているという印象でした。そんな所へ目の悪いこにたんが行って、どのようにしてリサイクル券の窓口を見つけ、列に並んだらいいのかと考えると、憂鬱な気分になってきたのです。それに郵便局には、後述するいやな思い出があります。
しかし、こにたんの思いは杞憂でした。おふくろに手引きしてもらい、局内に入ると、まず明るい雰囲気に驚きました。「いらっしゃいませ」、「いらっしゃいませ」、「いらっしゃいませ」とどこからともなく挨拶の声がしてくるのです。これは10年前の郵便局にはなかったことです。見えない者にとって、むこうから声を掛けてくれることほどありがたいことはありません。声がなければ、どこにいるかわからない職員に対し、まるで空中に向かって話しかけるように、おずおずと「すいません」と言わなければならないからです。それから、以前になかったもう一つのこととして、今回は女性の、しかも若い声がしてきたことです。こにたんが思わずその声のするほうに、「すいません」と声を掛けたのは言うまでもありません。そして、安心してリサイクル券のことを切り出すことができました。
リサイクルの料金はメーカーによっても異なるため、リサイクル券の購入にはメーカー名、ブラウン管式か液晶かの別、画面のサイズなどの情報が必要でした。また書類に住所・氏名・電話番号などを記入する必要がありましたが、おふくろは高齢ですし、こにたんも書けないので、女性職員に代筆をお願いしました。手続きを終えると、座って待っているようにと言われたのでしばらく待っていると、先ほどの女性職員が、リサイクル券とおつりと領収書を、わざわざこにたんが座っているソファーにまで持ってきてくれました。料金は3千円ほどでした。おつりを少し間違えたのはご愛敬ですが、その女性職員は本当に親切でした。
さて、あとはテレビとリサイクル券を指定取引場所に持ち込むだけです。こにたんの単身赴任先では、町外れの西濃運輸の営業所が指定取引場所となっています。昔の記憶をたどり、おやじに道順を伝え、無事に到着しました。営業所の構内に入ると、すぐにリサイクル窓口の看板が見つかりました。窓口で簡単な手続きをしたのち、渡されたシールをテレビに貼り付けます。そして車で奥まったところにある係員の所まで行くと、係員がトランクの中のテレビを台車に乗せてくれ、それをもって処分は完了です。
以上が、今回のテレビリサイクルの一連の流れです。昔に粗大ゴミを捨てていたときよりは手間はかかりますが、一度なれてしまえば、また視覚障害者でも多少の手助けがあれば、何とかなりそうでした。一連の流れの中で、やはり印象に残ったのが、しつこいようですが郵便局の変化でした。というのも、こにたんには郵便局にまつわる、心に残る2つのいやな出来事があるのです。もう時効なのでご紹介したいと思います。
一つはこにたんが学生の頃、年末のアルバイトで、名古屋の中央郵便局で働いていたときのことです。年末ということで、多くのアルバイト生は年賀状の仕分けに携わっていましたが、こにたんが回されたのは、小包の係でした。そこでは、鉄道の貨車が止まると、小包がたくさん入った何十キロもの重さの袋を貨車から降ろし、電動カートに積み替え、仕分けコーナーまで運び、そこで行き先別に仕分けるというのが仕事でした。そしてそこで驚くべき光景を眼にしたのです。
今では荷物の仕分けは、バーコードをコンピュータが読み取り、コンベアで流れていく荷物を、機械が行き先別に仕分けるというのが一般的でしょうが、そのころの仕分けといえば、3メートルほど先に並べられた10個ほどの鉄製のカゴに、荷物をほうり投げることで行われていました。そのような手荒な仕分け方法ですから、荷造りの仕方が悪いと、中のものが破損します。こにたんが仕分けを担当する前に、正規の職員がやっているのを見ていたところ、荷物の中のウィスキー便が破損して他の荷物や床がびしょ濡れになったり、新巻鮭の頭が段ボール箱から飛び出したりしていました。また、重い荷物もほうり投げるものだから、下の荷物の箱が変形したりもしていました。こにたんは、「こんなことしてていいのかなあ」と思いつつも、先輩職員と同じ事をするしかありませんでした。それ以来、郵便局で荷物を送る際には、厳重な包装を心がけるようになりました。
次の経験は、妻と結婚してまもなくの頃のことです。妻がある古本が欲しいというので、ネットで検索したところ、名古屋の大学堂という古本屋にあることがわかりました。ここはこにたんが学生の頃よく通っていた古本屋だったので、懐かしく思いつつも、5万円というその本の値段に躊躇しながら、愛する妻のために渋々注文しました。ところがその本屋さん、珍しく代金後納で、しかも現金書留で送るように指定されていました。妻にそのことを伝え、あとは妻に任せることにして、こにたんの仕事は終わったつもりになっていました。
ところが、10日ほど経ったころ、古本屋のおやじさんから電話がありました。何か怒っているようです。聞けば、まだ代金が届いていないとか。慌てて妻に確認すると、妻は本が届いてからすぐに送金したと言います。どうなっているんでしょうか。古本屋にはいついつ送金したがなお郵便局に問い合わせしたい旨伝え、妻にはすぐに郵便局で確認してもらうように言いました。
数時間後、妻から返事がありました。落ち着かない声で妻が言うには、どこかの職員が現金をねこばばしていたとのことです。いやあ、驚きです。現金書留というのは皆さんご承知の通り、どこの局の誰が担当したか記録が残るようになっています。にもかかわらず、そのような大それた事をする職員がいたとは、信じられませんでした。妻は別室に呼ばれ、説明を受けた後、警察に告発することもできるがどうしますかと問われたそうです。でも人のいい妻は、それなりの処分があるのでしょうから、それ以上は結構ですと答えたといいます。
最近でも、若い郵便局員が、郵便物をどこかに捨てていた、というようなニュースを耳にすることがありますが、そういうのを聞くたびに、こにたんはかつてのいやな出来事を思い出します。そんなこにたんですから、明るくなった郵便局の雰囲気が、余計に対照的に映ったのかもしれません。国鉄がJRになり、駅員の態度がよくなったことを実感されている方も多いと思いますが、昨年に上場を済ませ、名実ともに民営化された郵便局にも、さらにお客様指向に立った、丁寧なサービスを期待したい者です。

戻る

inserted by FC2 system